大変革期を迎えた食品スーパー業界の針路

スーパーマーケットの近未来 記念講演抄録

株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア
編集局 局長
千田 直哉 氏

はじめに

「大変革期を迎えた食品スーパー業界の針路」というタイトルで、90分強、お話しいたします。

さて、2015年の『商業確報統計』(経済産業省)によれば、小売業の年間商品販売額は約122兆円となっています。この中には、自動車の販売や燃料や農機具、自動販売機による販売などが含まれています。

諸説はありますが、当社は、食品スーパーの市場規模を18兆3,607億円と見ています。『商業統計』の調査は、不定期の実施であり、現実の市場にマッチさせるために分類方法も毎回異なるために、連続性がありません。ただ、この5~10年間の食品スーパーの市場を振り返ると横ばいの状況にあり、17~18兆円で推移しているものとみられます。
では、食品スーパー市場には、どんなプレーヤーがいるのでしょうか?

売上高第1位はイオングループのSM・DS事業(マックスバリュ各社やU.S.M.Hを含む)で2兆8902億円。そのシェアは15.7%です。セブン&アイホールディングスは、ヨークベニマルや万代などを合わせて9,362億円で5.1%。単独企業としては、ライフコーポレーションが首位で6,528億円。シェアは3.6%です。ほかの業態と比べると寡占度が低いのが特徴です。それでも、年を追うごとに上位集中化が進んでいます。その結果、2016年度現在の上位10社のシェアは37.1%です。
食品スーパー市場は、少子化や高齢化や人口減少で縮小傾向に向かう中にあります。しかしながら、そんな市場であるにもかかわらず、大手企業を中心に出店意欲は旺盛でオーバーストア化が進んでいます。また、ドラッグストアやEコマースなどの異業種が続々と参入しており、業態を超えた厳しい競争時代を迎えています。
一方、海外に目を向けると、中国などの新興国との間で食糧争奪合戦が繰り広げられています。今の状況を一言で表現するなら、「混沌」が適当なのではないでしょうか?
その中での問題点を指摘するならば、プレーヤーの同質飽和化です。同質飽和化を同質化と飽和化に分けて考えてみましょう。

まず同質化というのは、大半の食品スーパー企業は看板を変えるとA社もB社もC社もほとんど変わらないということです。その原因は、ひとつに問屋(サプライヤー)に丸投げの商品政策、2つに競合店のモノマネ、3つにローコスト経営による従業員の忙しさにあると考えられます。これらの結果、売り場に思考能力がなくなり、隣と同じことをやっていればいいやというぐらいの形で同質化が進んでいるのです。
ただし、同質化であっても、競合がなければ問題なく商品は売れました。例えば、東京都内に食品スーパーが1軒しかなければ、その店は売れるでしょう。しかし、その店と同じ仕様の店舗が必要以上に増えていけば、売れなくなっていきます。
今、食品スーパーと言われて店舗は全国に約1万8,000店舗あるといわれています。その店舗数で日本の人口の1億2,000万人を除すと約6,666人になります。食品スーパー1店舗に必要な最低商圏人口が2~3万人となれば、すでに明らかなオーバーストア状態と言って過言ではありません。そんな中にあって、食品スーパーの中でも進取の気概を持つ企業は、脱同質飽和化を図るために、もがき、あがき、苦しんで、新しい食品スーパー創造にまい進しています。