「札幌美食店探訪」 2

ススキノのはずれ(南7条西5丁目)に今回紹介する郷土料理の名店「高はし」がある。
店構えは40数年、この場所で営業されてきたことを感じさせる年季の入った建物で昭和の匂いを感じさせるお店である。質の高い海鮮料理で定評があり、味にうるさい業界人の宴会にもしばしば使われていた。
昭和の全盛期には主に会社の接待で使われ、本州からのお客様から大人気のお店だった。そのせいか、一見敷居の高いお店と思われ、“ 一見さんお断りのお店 ”と勘違いされている方も少なくない。だが入ることは出来る。現にこの私は学生の頃、昼飯をどこか食べるところがないかと、ふらりと立ち寄ったくらいである。
あれから45年。ススキノのあらゆるジャンルのお店に顔を出してきたが、北海道を食べさせる「郷土料理のお店」だけは浮気もせず通い続けた唯一の店である。とは言ってもいつもいつも通える店では決してない。年にほんの数回ではあるが。
実は45年と言ったのは、私自身は正確に覚えていなくて、高はしのおかみさんが教えてくれた。ちょうど娘さんが生まれた年だそうなので間違いないはずだ。

最近のお客様をみると会社の会合や接待でも使われているが、昔、本州から単身札幌で勤務し接待に使った方々が本州に帰ってから「高はし」の料理を家族に食べさてやりたいと、旅行中や札幌に立ち寄った時に忘れられず訪れたり、また北海道に住む方のなかにも現役ばりばりの時に接待で来た「高はし」を思い出し、今度はその感激を家族に味あわせたいと利用されている方が増えているようだ。
私自身も同様で、最近は本州からの大切なお客さまには一度は必ずご招待することにしている。
お客様はどなたも感激し、北海道の料理のダイナミック溢れる素材を生かした味と盛り付けに酔われ、心から喜んで戴くことができるお店でもある。
8月9日に、本州より日頃からお世話になっている流通業のTOPの方が札幌に来られたので高はしで食事をすることになった。

高はし

いつもお客様をお招きするときはコースでお願いするのだが、私がこだわる定番料理として「刺身の大皿盛り」と「時知不(時しらず)の塩焼き」そして「かにのみぞれ焼き」がある。これだけは必ず入れてもらうことにしている。
40数年この店の定番(私の中で)は全く変わることなく受け継がれ、私を満足させてくれた北海道発の料理である。
【先付け】先付

 

高はしの看板料理は刺身。
大皿盛りは圧巻だ。60cmの大皿に盛り込まれた中トロ、あわび。ぼたん海老、平目、平目の縁側、ホッキ貝。生うに、たこの足と頭、ずわいガニ、ホタテの貝柱、数の子、朝イカ・・・それぞれ包丁の角が立っている見事な切り口。ほれぼれする見事な出来栄えでお客様も感激。
【お造り】お造り

 

刺身のみならず板前さんが作る煮物、焼き物、土瓶蒸しなどの和食のレベルの高さにも目を見張る。なかでも時知不(時しらず)の塩焼きと蟹のみぞれ焼きはお奨めだ。
時知不(時しらず)は赤穂の天塩(あまじお)のなんとも言えない塩加減で焼かれている。レモンもついているが、ここはレモンは使わず塩の素晴らしさを堪能してほしい。
そして皮の焼き方が最高。是非焼いた皮を捨てないで食べつくして戴きたい。
そして時知不(時しらず)に付いてくるかぼちゃ。意外に思われるかもしれないが赤穂の天塩と素晴らしく合う美味しさ。今回ご一緒したお客様はこのカボチャは「サプライズ」といってレシピを教えて欲しい、出来れば商品化したい。との惚れ込みようであった。
【時知不(時しらず)の塩焼き】時知不(時しらず)

 

もう一つのサプライズは、「蟹のみぞれ焼き」毛蟹のすり身をオーブンで焼いたもの。あんかけが何とも云われぬ良い味を出している贅沢なカニ料理。
【蟹のみぞれ焼き】
蟹みぞれ焼き

店内は一部改装し、1階奥の座敷がそのまま土足で上がっても良いテーブル席になったので膝の悪いお客も気軽に利用できるようになった。
高はしは店の入り口も地味で前を通りかかっただけでは見落としてしまう店である。
ミシュランガイドにも地元の美食店案内にも掲載されたことがない、本州からの観光客もほとんど知らないお店である。
だがお店の格式とは建物の豪華さや見た目にあらず、とはこういう店を言うのだろう。

次回の札幌の美食店探訪は札幌の寿司店を取り上げます。

安藤 敏明