「札幌美食店探訪」 3

札幌の美食店探訪3回目は「寿司処ふしみ」
ススキノにはレベルの高い寿司店がひしめくが、なかでも私が一押しなのは「ふしみ」。
ミシュランガイド北海道版には一つ星はおろか、紹介店にも入っていない。だが、寿司にうるさいススキノの食通は誰もが知っている名店だ。ススキノの繁華街でも有数の賑やかさを誇る「新宿通り」には、名の通った寿司店が5軒ほどもある激戦地。その通りの古いビルの1階の中奥に「寿司処ふしみ」がある。
お店に入ると右手にはテーブル席。真ん中から左手まで逆L字の大きなカウンターが広く取ってあり、とても美しくきれいなお店だ。左手奥には、まとまって15人ほどは利用できる和室もある。
ふしみ

店主の伏見雄二さんは北海道美深町出身。15歳の時に東京に出て、寿司店でみっちり修業し、江戸前寿司職人として腕を磨き独立した。四季折々の生きの良いネタをきっちりとした見事な職人の技で提供してくれる。
店主と腕の良い職人2名がカウンターでお客様と会話を交わしながら握ってくれる。また、料理はすべて職人たちの手作りで、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
二人の職人は、今、独立しても太鼓判を押す力量を持っていて、お客の中には職人さんのファンも多いと聞く。
「ふしみ」は旬の天然ものにこだわり、味にうるさい食通も認める「本物の寿司」を提供することに努力を続けている。四季折々の魚、鯨ベーコン、毛ガニ、積丹沖の本マグロなど一度は味わってみたい逸品揃いだ。

逸品料理の品々

地元客はもちろんだが、これらの味覚を楽しみに訪れる本州からの常連も多い。
日本ハムファイターズの選手も、札幌ドームでのホームゲームが終わるとよく顔を出している。

私が学生の頃の札幌の寿司店の職人は、「素材だけを売り物にして、寿司職人としての必要な調理・加工技術は劣り、まるで芸がない」と酷評されていた。 近年、寿司店の子息を中心に東京でみっちり修業し、寿司職人としての技を磨き、お店の後継者としてカウンターの前に立っているお店が増えている。そのため、握るだけでなく、焼く、締める、煮る、炙る、ヅケなど、多彩な技術を駆使して、寿司店ならではの手作り料理でお客を満足させてくれるようになった。その結果、もともと素材ではピカイチだった北海道の寿司店に、その素材を見事に生かす技が伴って、日本でも有数の寿司の本場が出来たのだと思う。

北海道は素材は豊かだが、調理加工技術が弱く、商品化で後れを取っていると言われ続けてきた。昆布は日本一の産地だが、昆布料理は沖縄に。辛子明太子は、素材は釧路の収穫が圧倒的なのに、なぜか博多の辛子明太子に後塵を拝している。
最近ようやくその弱点に気付き、調理加工技術のレベルアップに努力の跡が見られるようになった。寿司店も素材をただ握るだけの寿司店から職人の調理技術の長足の進歩によって、素晴らしい寿司店が揃うようになった。

スーパーマーケットも同じだと思う。ことに生鮮は、単に鮮度が良いというだけではお客様を満足させることは出来ない時代だ。
鮮度管理技術は勿論のこと、調理加工技術、陳列技術、青果や魚、肉の集荷体制などの総合力が生鮮の強いスーパーマーケットの絶対条件となる。もちろん接客技術の向上は言うまでもない。
素晴らしく魅力ある強いお店はスーパーマーケットも寿司店も同じなのだ。

安藤 敏明