もうひとつの『甲子園』

「酷暑」「猛暑」と言われ続けた7月・8月の半ばから一転し、激しい雨に列島全域が見舞われて、その振幅の極端さに、昨今の気候の「尋常で無い有り様」を突き付けられているようなこのところの日々ではありますが、その中にあって今年も、夏の一大イベントである「全国高校野球選手権大会」が行われ、群馬代表で初出場の前橋育英高校が、激闘を制して見事深紅の大優勝旗を手にしました。

 

この「夏の甲子園」は、今大会で第95回となる開催回数を誇っていますが、歴史の長さこそ「本家の甲子園」には及ばずとも、今年度で20回を迎える「もう一つの甲子園」が、北海道を舞台として行われました。

それは「全国高等学校写真選手権大会」、通称「写真甲子園」と呼ばれる催しで、全国の高等学校写真部やサークルを対象にして行われるものなのですが、この大会に出場する為には、全国8ブロックから選抜される地区代表校になる必要があります。
今年度の応募校数は過去最多の522校(道内は45校)で、今年は全国8ブロックから予選を勝ち抜いた代表18校に加え、第20回大会記念特別枠2校を招聘した計20の代表校が上川管内東川町に集結しました。
この代表校となる為の初戦突破を目指して、数万にもおよぶカットを撮る学校もあり、また応募できるのは1学校につき1チーム・1作品だけという事で、高校野球の全国大会に劣らない、狭き門が立ちはだかる事になります。

しかし、興味深いのはここからで、本戦大会は、毎年7月下旬の北海道を舞台に4日間かけて行われ、各校3名1組の団体戦で、主催1市4町(東川町・美瑛町・上富良野町・東神楽町・旭川市)内の大雪山国立公園一帯の決められた数か所のステージ(撮影ポイント)内にて組写真を撮影する事になります。
つまり、選抜された高校生カメラマン達は、大会の期間中、北海道の自然の中に身を置いて、そこに暮らす人達や自然と関わり合う中で、チームとして協力しながら、作品を作り上げて行くのです。

 

甲子園球場を目指し、汗にまみれ、練習を積み重ねる高校球児達の努力も本当に見上げたものであり、またこの写真甲子園に参加する高校生達も、ブロック代表となるべく、写真撮影の技術や感性を高める為に多くの時間を費やし臨む事でしょう。が、その本番大会が「写真」の甲子園では、炎天下の中、1つとして負ける事の許されない緊張感の中では無く、この北の大地で、そこに生きる人と、大自然と触れ合いながら、ある時間の幅を持った中で創り上げていくものであるという事が、何かほっとさせられ、嬉しい気持ちにさせられます。

この写真甲子園も、1次・2次・ファイナルの3回の審査会が公開で行われ、また審査会では作品の内容、制作意図等について各校にプレゼンテーションが課せられ、それに対する写真家の立木義浩さんらプロの方々の講評が待ち受けているという、とても厳しいものなのですが、大会後の交流会では、甲子園球場で持って帰られる土の代わりに、地元東川でとれた「モモンガ米」を思い出に持ち帰る事が出来たり、岩見沢高等養護学校から車いすの生徒達が、それをハンデとしない「シャッターを切る」という平等な一点で闘いを行ったりと、野球の甲子園とは違った「素敵さ」を随所に感じさせられます。

 

今年の写真甲子園は、初優勝となる埼玉栄高校が大会を制しましたが、「競う」事の中に「和らぎ」と「柔らかさ」を感じさせられる、この「もう一つの甲子園」を、これからも柔らかく応援して行きたいと思います。

田畑 貴子