2014年 ヒット商品番付

来年A&Aプランニングは10周年を迎える。
今年はその1年前の2015年。これまでの8年を振り返りながら、仕事や社会の動きとともに思うがままに投稿してみたい。

第1回は昨年の12月3日付の日経MJに掲載された「2014年ヒット商品番付」を取り上げる。日経MJが消費動向や世相を踏まえ、売れ行き、開発の着眼点、産業構造や生活心理に与えた影響などを総合的に判断して作成したものだという。
多少「岡目八目」的なところもあるが、いろいろ見えてきたものもあるので紹介したい。

2014年ヒット商品番付

 

消える「境界=ボーダー」、誘う「魔界=ファンタジー」

横綱消費増税でアベノミクスの高揚感が消えた2014年。消費を支えたのは、訪日外国人による国境を越えたインバウンド消費であった。
円安で訪日旅行の割安感が高まり、10月からは免税対象品が家電や衣類から、化粧品や食料品などに拡大した。訪日外国人の旅行消費額は1~9月で1.4兆円と前年比40%増。東南アジア向けにビザの発給要件が緩和され、今後も越境消費は伸びそうで、 “ インバウンド消費 ” が見事?東の横綱。
西の横綱は、日本初のコンテンツとして気を吐いた「妖怪ウォッチ」。
(株)レベルファイブ(福岡市)が一昨年7月に発売したゲームで、昨年1月にバンダイが時計型玩具の「DX妖怪ウォッチ」と「妖怪メダル」を発売し、人気に火が付いた。
昨年12月20日公開の映画も前売り券が84万枚と配給する東宝の映画として史上最多を記録した。子供のために、親や祖父母が玩具店に並ぶ社会的ブームとなった。妖怪メダルの販売枚数は1~9月で1億枚を超え、関連商品の2015年3月期売上高は400億円を見込む。妖怪ウォッチが世代消費を動かしたように、厚みを増すシニア層をいかに取り込むかがこれからのヒット商品のカギとなる。

 

大関大関に目を転じると、東は「アナと雪の女王」、西は「ハリーポッター in USJ」。
4月の消費増税で家電製品やファッションなどの比較的高額な商品で大ヒットが出にくかったのが今年の特長だ。かわって海外から越境した映画などのコンテンツ関連が上位を占めた。
東の大関となった、ディズニー映画「アナと雪の女王」は、興行収入が9月末で250億を超え、歴代3位に。CDの累積出荷枚数は9月末で130万枚を突破。
DVDとブルーレイ、デジタルコピー権がセットになった商品は10月末で実に300万枚を超えた。
一方、西の大関になったのは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが映画「ハリー・ポッター」の世界観をイメージした新エリア、「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」。約460億円を投じ、主人公が魔法を学ぶホグワーツ城などを再現した。7月の開業だがUSJの入場者数は4~10月で前年同期比15%増の701万人。過去最高の年間入場者数を見込む。

 

関脇東の関脇は格安スマホ。
4月に端末と定額ネット接続、通話基本料の合計で月額2,980円(税別)で発表したイオンを皮切りに、家電量販店系、通信会社系、ネット系が参入し、9月にはヨドバシカメラが月額1,000円を切る商品を投入。契約数をもとに推定したスマホの台数は9月末で100万台を超えた。
西の関脇は米アップルが9月に発売したスマホ「iPhone6」。
全世界の販売台数は発売3日間で1千万台を突破した。今までの機種よりも大きな画面と薄い本体が特徴。

 

小結東の小結は、マツダが9~10月に発売した小型車「デミオ」。
消費増税で新車販売が落ち込む中で11月中旬までに月間販売計画(5千台)の2倍以上の2万5千台を受注。国内メーカーの小型車では初めて環境性能の高いディーゼルエンジン車を用意した。
西の小結は、スズキが昨年1月に発売した軽自動車「ハスラー」。
月5千台の販売目標を7割上回る8万691台(1~10月)を販売し、多目的スポーツ車(SUV)とワゴンタイプを融合した「クロスオーバー」という新ジャンルを切り開いた。

 

張出大関国境を越え世界で戦った男子のスポーツ2選手が光った。
テニスの錦織圭選手は9月の全米オープンで、アジア男子初めての準優勝。中継したWOWOWの同月加入数は過去最高の約15万件。2月に開催されたソチ冬季五輪では、羽生結弦選手がフィギュアスケート男子で五輪では日本初となる金メダルを獲得。
「ユヅリスト」と呼ばれるファンが増え、スケート場が活況に。
2選手の健闘を称えて東西の張り出し大関に。

 

手間もお金もかかるのはイヤ!!目立った “ しっかり女 ”

ヒット商品の共通項を探ると、増税で消費者の節約志向が強まり、その影響が如実に出た2014年であった。

男性に比べて、消費意欲が旺盛とされる女性だが、2014年目立ったのは堅実な消費だ。
4月の消費増税以降、「時短」や「簡便」など、自分にとっての実利をしっかり見極めた買い物が主流となった。
一方、日頃のストレス発散はエンタメで、現実逃避できるドラマや、奮闘するヒロインに共感する書籍などが人気を集めた。

仕事や家事で日々忙しい現代女性の心を掴んだのが、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)ジャパンが4月に発売した「ジェルボール洗剤」。粉末でも液体でもない「第3の洗剤」と話題になった。
水溶性のフィルムに濃縮したジェル状で洗濯1回分が入っており、洗濯前の面倒な計量が不要な点が好評化を得た。発売半年で衣料品洗剤のシェア1割を占める地位を確立した。

手間のかかる髪の毛のカールを簡単な操作で短時間でつくれる、米コンエアーのヘアアイロン「ミラカール」も、忙しい朝の見方と女性の時短ニーズに合致した。
家電量販店では理美容家電の売上で首位を争うまでになった。

堅実ぶりは資産運用でも発揮された。
昨年1月にスタートした「少額投資非課税制度(NISA)。個人が年100万の範囲で投資した株式や投資信託から受け取る売却益や配当が非課税となる。金融庁によると6月末時点の口座開設数は約727万件。総買い付け額は1兆5631億円で、そのうち4割以上を女性が占めた。

ファッションでも賢く消費する傾向が目立った。
手頃な価格ながら、コーディネートの雰囲気を変えられると、ファッションアイテムとして急浮上したのが靴下だ。
靴下専門店のチュチュアンナ(大阪市)では1~10月のくるぶし丈の靴下の売上が前年同期比7割増。Tabio(タビオ)では中でも「白」が人気で売上は2倍伸びた。

文具ではパイロット万年筆の新ブランド「カクノ」が話題に。
同社の万年筆として最も安い1,000円(税別)で初年度15万本の目標に対して発売10ヶ月で50万本が売れた。
小学生向けに開発されたが、美文字ブームで手書きにこだわる女性の心も掴んだ。

一方、節約や人間関係など、日々溜まるストレスはエンタメで発散する女性が多く、話題になったドラマや書籍などは女性がけん引役になった。
「不倫なのに胸キュン」「現実逃避できる」など・・・。
7~9月に放映されたドラマ「昼顔~平日午後3時の恋人たち」は夫を会社に送りだした後、家事をきちんとこなして昼間にほかの男性と恋に落ちる “ 平日昼顔妻 ” が主人公の不倫ドラマ。
修羅場になってから視聴率が上昇し、最高は16.7%を記録。主題歌は音楽配信のダウンロード数も12万~13万に上った。
ドラマに登場した画家の北村直登さんの絵にも注目が集まった。

書籍では「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」が60万部のベストセラーに。
受験生の親や、ギャルに共感する若い女性などから支持を得た。

 

“ 飲みたいけど痩せたい!よくばりオヤジ ”

久々にオヤジの復権が目立った。けん引役となったのが中高年の男性会社員。
懐事情に合わせて、ファミレスや牛丼店で少しだけお酒を飲む「ちょい飲み」を楽しむ一方、プリン体と糖質をゼロに抑えた発泡酒を選ぶなど健康にも配慮する、「飲みたいけど、健康でいたい」というわがままな「オヤジ心」をつかんだ商品やサービスがヒットにつながった。

中華料理店「バーミヤン」は会社帰りのサラリーマンが2~3人で中華料理をつまみに談笑する姿が目立って増えているという。紹興酒や焼酎などを楽しみ、お酒が残ったボトルは店で預かることもできるため、常連客も多いという。

消費増税に伴う節約志向を受けて、売上高が伸び悩む外食産業で注目を浴びたのは居酒屋やバーではない。
中華料理店やファミレスでお酒を楽しむオヤジたちの身の丈に合った「ちょい飲み」だ。
ファストフード店や定食店でも「ちょい飲み需要」を取り込もうと、ビールと一品料理のセットなどを置く店が増え、新しいスタイルとして定着した。

多くの中高年男性はお酒の誘惑には勝てない。せめて体に負担の少ないお酒を飲みたい。
そんな揺れ動く「オヤジの心」を掴んだのは、痛風の原因とされるプリン体と糖質をゼロに抑えた「Wゼロ」の発泡酒。7~9月の発泡酒全体の出荷数量は前年同期比13.0%増。健康志向を取り込み、縮小するビール系飲料の市場で存在感を高めている。

清涼飲料でも健康に配慮した特定保健健康食品(トクホ)商品が売れ筋に。
コカ・コーラグループとアサヒ飲料が、脂肪と血糖値に関する2つの効果を打ち出したトクホ茶を相次ぎ発売。
アサヒの「食事と一緒に十六茶W(ダブル)」は年間の販売計画を2倍に引き上げるなど販売好調だ。若者から中高年層まで幅広い需要を取り込めるトクホ商品の販売競争は激化している。

中高年を中心に新しい健康診断の形として話題を集めたのが、遺伝子解析サービス。
ヤフーやDeNAなどが参入し市場が拡大。自宅でキットを使用して送り返すだけという手軽さもありヒットにつながった。

中高年を中心に高まる健康志向に対応した新しい商品も生まれた。
自然界に僅かしか存在しない単糖「希少糖」やミドリムシがその代表例。
希少糖は香川大学やでんぷん加工メーカーの松谷化学工業が産官学で研究開発を進め、量産化の手法を確立した。
希少糖の一種「D‐プシコース」には血糖値上昇抑制効果があるとされ、甘さは砂糖の7割程度でカロリーはゼロ。松谷化学工業が「D-プシコース」を含むシロップを生産している。
ローソンやキリンビバレッジや伊藤園といった飲料メーカーが希少糖含有シロップを使った商品を相次ぎ発売。
供給先は約200社400品目まで広がっており、今春の機能性表示緩和により需要が更に伸びるとみて、松谷化学工業は12月から生産量をほぼ2倍の月間500㌧に引き上げた。

ミドリムシは植物と動物の両方の性質を持つ藻の一種で、アミノ酸やビタミンなどの栄養素を含み体内での消化率が高く効率的に吸収できるとされる。
ユーグレナなどは食品メーカーと組んで商品開発を進めており、同社のミドリムシを使った商品の年間売上高は100億円に上る。
イトーヨーカ堂は一昨年ミドリムシを配合した商品の開発を始めた。江崎グリコや永谷園などが新商品を投入している。

高倉健や菅原文太といった名優が逝き、遠くなった昭和。そんな時代に生まれたオヤジたちは健康志向を併せ持ち、平成風に飲食を楽しむ。
とても「器用」な消費者たちの市場は今後も広がりそうだ。

 

“ モノよりコト ” そして “ 食が縮んだ ” 2014年ヒット商品番付

以上が2014年ヒット商品番付発表時の日経MJ特集の記事のあらまし。
多少強引なところも垣間見えるが総じて2014年という時代を反映したものとなっている。

だが私に見えてきたものは “ モノ ” より “ コト ” がヒットした2014年と映った。
モノづくり日本の苦戦の姿である。そして商売柄、気になったのは食べ物のヒット商品がなかったことである。
確かに機能食品などは孤軍奮闘した。だがスーパーマーケットの仕事をするものとってヒット商品が見当たらないことは深刻である。

スーパーマーケットのリーダー的経営者は、口を揃えて「2020年以降の人口減が食品の摂取量の減少となってスーパーマーケットに深刻な影響をもたらす」という。
だが、食の縮み込みはもう始まっているのだ。

安藤 敏明