独学のススメ

今、「独学」が注目されている。
独学の達人といえば、まず浮かぶのは、独学で論語を学んだ農政家「二宮金次郎」。

7歳で小学校をやめて以来、図書館で独学した発明王「トーマス・エジソン」。

そして正式な教育はほとんど受けず、独学で弁護士になった第16代米大統領「エイブラハム・リンカーン」。

存命されている達人では、専門書を読みあさり、独学で建築を学んだ建築家「安藤忠雄」さん。

独学で宅地建物取引主任者、司法書士試験に合格、大学も通信教育で入り在学中に司法試験に合格した弁護士「大平光代」さん。

そして今独学の達人として脚光を浴びているのは「東大教授が教える独学勉強法」(草思社)の著者、東大経済学部教授「柳川範之」さん。

ビジネスマンの街、東京大手町の大型書店では柳川さんの本がどこでも平積みされているという。
柳川さんは、高校時代は父親の転勤でブラジルへ。現地校に行かず、日本の参考書や教科書で独学した。
帰国して大学入学資格検定(当時)に合格後、今度は父親の転勤先シンガポールで慶応大学経済学部通信教育課程を履修。つまり、中学を卒業してから東大大学院に進学するまでの7年間、学校に一切通わず独学で切り抜けた。

自らの経験に基づいた資料収集や本の読み方など、独学法を披露したこの本は昨年7月の発売以来6刷3万3000部と予想以上の売れ行きと出版界を驚かせているという。
読書の約7割が男性、30~50代が半分で20代も約2割いる。
「企画当初は定年後に勉強したいリタイア組が多いと予想していたので意外だった」と、担当編集者は言っているとのこと。

でも私は意外でもなんでもないと思う。それは75歳まで働く時代はすぐそこ。
もはや学生時代だけ皆と同じレールに乗って勉強すれば明るい未来が約束された高度成長時代とは違う。職務上、必要なスキルや知識を学び直さないと、社会の変化に追い付けず、50代、60代でも「社内失業」するかもという危機感が広がっているような気がする。

 

独学は今の時代が求めている勉強法だ。

インターネットで検索すれば何でも分かる時代だ。
博学だけでは武器にはならない。むしろ情報や知識を自分の中で熟成させ、加工するような能力が求められている。そして好きな時期に好きなペースで学べる上、自分で考える癖がつくからだ。
インターネットを利用すれば正規の学生でなくても米国のマサチューセッツ工科大や、ハーバード大などの講義だって無料で受けられる時代だ。まさに独学に適した環境がこれほど整った時代はないと言える。

オンライン公開の無料講座を受講し、修了証も取得できる教育サービス「MOOC(ムーク)」が2012年に米国で始まり、日本でも昨春、「JMOOC(ジェイムーク)」としてスタート。
今年春までに東大などの45講座が開講される見込みだ。なんと、受講者が10代から80代まで10万人を突破した。

専門的な知識だけではない。多くの人が必要性を感じていることと言えば、やはり英語だろう。
以前は高額な教材しかなかったが今はより充実した無料教材がネット上に転がっている。まさに独学天国なのだ。

動画投稿サイトには英語学習者のレベルに応じた学習素材が大量に投稿されている。日本料理の作り方を英語で説明した動画や、外国人にはユニークと映る日本文化紹介の動画など内容自体が面白いので楽しんで勉強できる。

 

自分に応じた勉強法を見出すこと

柳川さんお勧めの独学法は「まず入門書を3冊読む」。そして本は必ず2段構えで読む。
1回目はざっと内容をつかむ。分からない専門用語にはこだわらない。
2回目には本の中身を鵜呑みにするのではなく、「納得できない点」を探すつもりで読む。

自分ならどう考えるのかを常に意識することが大事という。私のアプローチもこれに近く、物凄く説得力がある。
でも、特に何をどう勉強して良いのかが明確でない人はどうすればよいのか。

柳川さんは、「いきなり勉強しようとせず、テーマ選びや勉強法選びに時間をかけることが大切。やみくもにネットサーフィンをするよりは、大型書店や、図書館に行くのがお勧め。専門書や学習書のコーナーを見まわし、手に取りたくなる本が、今あなたが一番気になっている分野です」と助言している。つまり独学で最も大切なのは自分に応じた勉強法を見出すことのようだ。

 

独学の最大の敵は「三日坊主」 不向きは「完璧主義者」

なにせ学校の様な強制力がない。いつでもやめられるという誘惑がおきる。だからこそ、「楽しんで続けられる勉強法を選ぶことが大事」。
他人の合格体験記や経験談を調べれば、自分に合った方法が見つかる上に、モチベーションも上がる。
そして決して孤独になることはない。講演会やカルチャースクールなど、いろいろな機会を上手に利用すればよい。人との出会いは何より学ぶ意欲を高めてくれる。

ところで独学に不向きはある。「完璧主義者は向かない」と断言できる。
目標の3割くらい達成できればいいや、とおおらかに構えられる人が長続きする。
完璧主義者は初志貫徹できなかった時に自責の念にかられるからだ。

好きなことを好きなように学べるのが独学の醍醐味。
年の初め、独学を始めるにはいい季節。楽しむことを最優先して今年は何を学ぼうか?

安藤 敏明