一億総活躍社会

手紙の末尾で、「ご活躍をお祈り申し上げます」なんて言われると、時々複雑になる。大体「活躍しようなんて思っていない年齢になったのに、大きなお世話だ!」「活躍って何だ?」
辞書には「大いに活動すること」とある。「活動の成果」には触れていないが、この手紙は「輝かしい成果」を期待するのだ。だから私は手紙の末尾に「ご活躍をお祈り申し上げます」とは絶対書かない。皮肉を言っているようで納まりがつかない。
「勢いよくはねまわること」という意味もある。夏目漱石の、「吾輩は猫である」には、「一大活躍」という言葉が何度か出てくる。「苦しがって羽根を振って一大活躍を試みる」とか、「無用の長物を利用して一大活躍を試みたが・・・・・」とか。中学教師・苦沙弥先生の飼い猫が近代文明に戸惑う人間を風刺した小説だから、どことなく「一大活躍」という言葉に「嘲笑」の響きが隠されている。
突然、安倍首相が誰彼なしに「一億総活躍だ!」と命じた。「一億総活躍担当相」までできた。何をするのか?
日本人にもわからないから、英字新聞は苦労した。「ジャパンタイムズ」は、
“ minister in charge of building a society in which all 100 million people can play an active role ” と書いた。「一億人すべてが積極的な役割を果たす社会の構築を担当する大臣」という意味だろうか。

「一億総・・・」と聞けば「一億総懺悔」がまず思い浮かぶ。終戦直後の首相・東久邇稔彦は敗戦の原因論に触れ「軍・官・民・国民全体が徹底的に反省し懺悔しなければならない」と話した。要するに「一億」という言葉は「国家として」という意味である。ということは?まず、安倍首相の活躍が気になるが・・・・確かに、臨時国会も開かず地球の果てまで「勢いよく跳ね回り」、諸外国にカネをばらまいているのは事実だが、今回の国連総会の発言順は、ブラジル大統領、米大統領、ポーランド大統領・・・ときて、安倍首相は53番目。当然、聴衆はほとんどいない。このくらいの「活躍」なら当方にもできるような気もするが。

安藤 敏明