思ひ出は海を渡り

少し前の、2015年秋の終わりの話。
ある日、実家の母から電話があり、唐突に「アンタの着物、マリにあげてもいい?」と。
いつも親しみを込めて「マリ」と呼ぶ実家の隣に住むイギリス人家族の長女。5歳です。
2年ほど前、その家族が越してきた時に両親はすぐに仲良くなり、お互いの家を1週間に2~3度も行き来するくらいの親しい関係で、家族同様のお付き合いをしているようです。
ササキの知らないところで両親はインターナショナルな交流を図っていました。

イギリス人夫婦にはまるで人形のように小さなかわいい娘が2人いて、現在上が5歳、下が3歳。上の娘(マリ)が去年七五三で、幼稚園のママ友の間ではその話題になったとか。
我が実家に、実の娘であるササキよりも頻繁に訪れるその家族に、母はひとかたならぬ愛情があり、「着物?あるよ?着る?」となったそう。

着物といえば、成人式の時に母が奮発して買ってくれたものしか思い浮かばず、「ナヌ?あの振袖を!?」と驚いたのは言うまでもありません。
「まさかー(笑)。アンタが5歳の時に着たヤツよー」と。よく聞くと子供用の着物もあると言うではありませんか。母よ、そんな物がまだ家にあったなんて、思ってもみなかったよ・・・
自称「始末の良い」母。箪笥の奥から出て来ましたよ!

 

 

 

着物

いやー。
素晴しい保存状態の着物。かわいい帯や小物達。
まったく始末が良すぎです。意識が遠のくくらい昔のものです・・・。
眺めていると、この着物にまつわる唯一の思い出が少しだけ蘇ってきました。

遡ること〇〇年前。当時、父の勤めていた会社では、新しい建物が完成し落成式が執り行われることになり、テープカットのお手伝いをする5~7歳くらいの子供を社員の家族から募っていたそうです。ほかに候補がいなかったようで、幼少ササキに白羽の矢が!

我が家には「七五三」という行事は存在しなかったので、当然子供の着物などはなく、両親は急いで子供用の着物セットを買いに走ったと聞きました。
買った着物はサイズが少し大きくて、今は亡き父方の祖母が肩を詰めてくれました。

上に兄がいるせいで、いつも「お下がり」ばかり着せられていた幼少時代に、自分だけの着物を買ってもらい、それはそれは嬉しくて、嬉しさのあまり着物を直してくれていた祖母のまわりではしゃぎ、邪魔をして怒られたのを覚えています。

だけどこの着物、袖を通させてもらったのは後にも先にも落成式の一度だけ。
しばらくは「着物着たい!着たい!」とゴネていたそうですが、何度もゴネた割にはあっさりと記憶から消えてしまいました。
その後、一度も袖を通すことなく大人になり、着物は忘れられたまま箪笥の奥で眠り続け、数十年の時を経て平成の時代になった今、色褪せることなく再び姿を現し、英国生まれの少さな女の子の袖に通されました。

 

 

So Cute!

右が今回の話のきっかけとなったマリ、左は妹のエイミー。ご本人たちの許可をもらっていないので顔をお見せできないのが残念ですが、本当にキュートな娘たちです。
エイミーの着物は貸衣装らしく、きっとこれが最近の流行の柄ではないかと思いますが、昭和の着物も負けてません・・・よね!?

 

主が変わったササキの着物は2016年3月、彼女たちと共に海を渡り、イギリスにお引越しします。

佐々木 恭子