ラグビー・ワールドカップ日本大会

9月20日よりラグビー・ワールドカップが日本で開催されています。
サッカーJリーグ開幕以前の1980年代、ラグビー人気は大変なものでしたが、今再び盛り上りを見せています。
8月20日付 朝日新聞に掲載されたイングランド代表監督(前日本代表ヘッドコーチ)のエディ・ジョーンズ監督のインタビュー記事を紹介します。

 

飾らず、笑いも

指導するうえで言葉はとても大切だ。自分の発言は必ず選手に影響を与える。好影響か悪影響のどちらかで中間は存在しない。一言もおろそかにできない。
私が選手に声をかける目的は、フィールド上のプレーを上達させるためではない。個々の振る舞いや言動を変えるのが役目だと思っている。

普段から選手が何を欲しているかを見極めることが重要になる。背中を押してほしいのか、褒めてほしいのか、戦術的な助言か、存在に気付いてほしいのか。どんな会話にも選手は目的を持っている。それに気づかなければならない。私は着飾った言葉は使わない。今の世の中は情報であふれている。難しいことを言えば選手を悩ませるだけだ。簡潔で、直接的な言い回しを心掛けている。「人参と棒(アメとムチ)」は絶対に必要だ。

時には笑いも取り入れる。人は笑ったり泣いたりするとドーパミン(神経伝達物質)が放出され、学習効果が上がると言われる。状況に応じて冗談を飛ばし、和ませる。今は選手と英語で話し合えるので、日本にいた時に比べればコミュニケーションのストレスは少ない。日本語は自分にとっては外国語なので、やはり伝達が難しい。通訳への信頼はもちろんあった。ただ、果たして自分の思い描いた通りに全てが伝わったのかは確認しようがない。そこで日本代表を率いていた時は、いくつか日本語も使った。好んで言ったフレーズが「全然ダメ」。
選手がミスをした時に使った。分かりやすいし耳に残る。何より響きが楽しい。

 

読んで見て、吸収

相手を飽きさせないことも心掛けている。同じことを伝える場合も、あえて違った表現や言葉を選ぶ。だから日々の生活の中で、新しい言葉や言い回しを常に探している。

本は参考になる。題材は心理学やコーチング、マネジメントがほとんどで長い時間を読書に費やしている。選手の言動に変化を与えそうなきっかけを求めている。

他競技の指導者から吸収することも多い。イングランドで最適な学びの場となるのがサッカーのプレミアリーグ。試合後の監督インタビューの映像を見る。どのようなたたずまいで、どんな言葉を選ぶのか。とても興味深い。実際に会って感銘を受けた人もいる。マンチェスター・シティのグアルディオラ監督やリバプールのクロップ監督。マンチェスター・ユナイテッドのファーガソン元監督にも数度会うことができた。全員がメッセージを伝えることにたけている。クロップは言葉がとにかく前向きで、この人の下でプレーしたいと思う。ペップ(グアルディオラ監督の愛称)は少し違って緊張感があるが、前向きな姿勢は一緒だ。

スポーツと関係ない人の話も勉強になる。多分野の専門家のプレゼンテーションを見られる「テッド・トークス」という動画をよく視聴する。出演者はとにかくスピーチがうまい。

読書や動画から学んだ言葉は、そのままでは使えない。ただ並べるだけでは誰にも響かない。自分のものにするには練習が必要だ。何度も頭のなかで繰り返す。例えば、合宿初日。ミーティングで何を言うべきか、午前4時に起きて考え、反芻(はんすう)している。