新しい年のはじめに

明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
昨年12月2日に発表された新語・流行語大賞の年間大賞に、ラグビーW杯日本代表がスローガンにしていた「ONE TEAM(ワンチーム)」が選ばれたことは記憶に新しいですが、それに関連する記事から2020年を始めたいと思います。

 

ラグビーW杯日本代表 “自ら考え判断”  

2019.10.14朝日新聞掲載

「ワンチーム」の初出は、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)就任から1ヵ月後の2016年10月28日、欧州遠征メンバーの発表会見でのこと。15年W杯代表が12人で初代表は17人。新旧メンバーが混在する中で「一体感のある組織をめざそう」と選手らも加わって決めたものをジョセフHCが自ら発表したものだ。ジョーンズヘッドコーチ(HC)からジョセフHCへ。ジョーンズHCは細かい決め事を作って選手を動かした。ジョセフHCは決め事に加え、状況に応じた判断を選手に求めた。例えば、タックルを受けながら球をつなぐオフロードパスや、隣の選手をおとりにし、更に外側の選手に投げる飛ばしパス。成功すれば一発で防御を破れる一方、球を失うリスクも伴うプレーだ。
ジョーンズ前HCは原則禁止にしたが、ジョセフHCは「いける」と選手が判断すれば認めた。ジョセフHCは元ニュージーランド代表。「王国」の強さの源は、個々の優れた判断能力にあると知っている。日本の成長のためにはそれが必要だと考えた。

合宿では、体力を追い込んでからの実戦練習で選手に的確な判断を促し続けた。グラウンド外でも選手に考えさせた。トップダウンの前任者と違い、ジョセフHCは主将のリーチに加えて、9人の「リーダー」を指名し責任を与えた。「リーダーシップの分担がチームを強くする」との信念から、何も発言しない選手もいたミーティングがコーチ抜きで頻繁に開かれ、リーダー陣を中心に戦術理解が深められたという。練習では細かい指導はコーチに任せ、どんと構える姿が印象的だ。2人のHCを支えた佐藤 秀典通訳は「エディが先生タイプなら、ジェイミーは兄貴タイプ」とみる。3大会連続W杯出場のSH田中は「やらされるラグビーから自分たちで判断するラグビーに変わった」と成長を語った。

 

アメフト 関学大監督 “学生を成長させているか、自らに問う” 

2019.12.16朝日新聞掲載

今期限りで退任を表明している島内監督(61)は、自身の甲子園ラストゲームで12度目の大学王者に導いた。
「目標を達成した学生たちの姿を見たくて1年間やっている。私も報われた。」
1992年の就任時から人間教育を核に奔走してきた監督らしい言葉だった。関学大では、上級生が良き先輩として下級生たちを指導。競技への理解と絆の深さでチーム全体の組織力を高め、常勝の伝統を受け継いできた。高い自覚が求められる上級生に監督は惜しげなく助言を与えてきた。その機会のひとつが個人面談だ。毎年新チームが発足する年明けに監督が最上級生と1対1で向き合う。「お前はチームのために何をするんや」と問いかける。会話は録音。学生と約束事を作って、行動に責任を伴わせる。指導者は勝ちたいという学生の思いを手助けするのが役割と言う。

昨春、関学大の部員が被害者になった日大の悪質タックル問題が起きたとき、記者会見で言った。
「上からの厳しい指導では子どもたちは意見が言えない。個性を伸ばすことはできない。」

 

ゴリラのリーダーは態度で語る

二人の監督の記事を読みながら、ゴリラ研究の第一人者である京都大学 総長 山際 寿一氏の話を思い出しました。
「ゴリラは後ろを振り向かない。振り向いてしまうのは自信のなさの現れだからです。オレは後ろを振り向かなくてもお前たちがついて来ることは分かっている、という態度です。もちろん、障害がある子どものゴリラがいた場合は後ろを振り向いて、来るのを待ってあげます。でも、普通は後ろを振り向かず、じっと背中を見せて佇んでいる。そして、ついてきている気配がしたらまた歩き出す。背中で語るんですよ。心遣いと気遣いが出来る、それがゴリラのリーダーなんです。」